HONDA CBR1100XX 2001 | ||
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朝晩かなり冷え込むようになった11月下旬、ある朝いつものように出勤しようとしたところ、エンジンの一発始動に失敗した。今年の夏を過ぎたあたりから、抜群の始動性を誇っていたエンジンに微妙な陰りが見え始めていた。具体的には、それまでだとセルモーターを0.5秒程回せば難なくかかっていたエンジンが、1秒ほど回さなければ始動しないことが多くなっていた。だが、セルスターターボタンを押す時間の感覚は、納車からの長い年月で体に染み付いてしまっており、つい0.5秒程でセルスターターボタンから指を離してしまう。結果、エンジンの一発始動に失敗し、2回セルモーターを回すことになる。 この朝も、2回目のクランキングを行うべく、再度セルスターターボタンを押したのだが、セルモーターの回転が見る間に遅くなり、5秒ほどで止まってしまった。エンジンはかかっていない。セルスターターボタンから指を離すと、「キューン」と燃料ポンプが再起動し時計もリセットされている。これは典型的なバッテリ上がりの症状である。一応2度程押しがけをトライしてみたが、完全冷間時であることもあり、残念ながらエンジンはかからず、その日はバッテリーを充電器につないで電車で出勤した。 24時間後の翌朝、十分に充電されたはずのバッテリーでエンジン始動を試みると、1秒ほどのクランキングで問題なくかかった。その後2日ほどは問題はなかったが、3日目の朝、またエンジンの一発始動に失敗し、2回目のクランキングでエンジンが始動する前にセルモーターが止まってしまった。3日前の時点で十分に充電されたはずのバッテリーが、このように短期間で上がってしまうということは、充電容量が極端に低下していることを意味している。つまり寿命がきたのである。 納車から6年5ヶ月使い続けたバッテリーを交換するときがついにやってきた。通常2年毎に交換が推奨されているバッテリーをここまで使い倒すことができたのは、幸運というほかには、バッテリー延命器なるものをバッテリーにつないだ上、毎週末バッテリーメンテナーによる補充電を行ったこともその一因であろう。この酷使したバッテリーの寿命については、上で最初にバッテリー上がりを経験したときにそれなりの予感があったので、その時点で新しいバッテリーを発注しておいた。新しいバッテリーはACデルコ社製の「NBC GEL 12-BS」というもので、通販送料込み7K程度であった。 朝のあわただしい時間で、そそくさとバッテリーを新品に交換し、何事もなかったようにバイクで出勤した。やはり新しいバッテリーはセルモーターの回り方が力強くて安心である。だが、これがブラックバード最後の部品交換となった。というのは、最初のバッテリー上がりを経験する2日前、ブラックバードの後継機を購入することに決めたからである。今回のバッテリー上がり事件は、考えようによっては、ドナドナされるブラックバードが最後に駄々をこねたようでもあり、何か不思議な、そして切ない気持ちになった。リターンライダーとなって最初のビッグバイクであったブラックバードは、オートバイの安全な乗り方を教えてくれ、それとともにイジる楽しみを教えてくれた良き先生であった。 これからもブラックバードに乗り始めた頃の謙虚な気持ちを忘れず、永く安全にバイクライフを楽しんでいこうと思う。6年半、本当にありがとう。 |
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ディスク・パッド・パーツ | キャリパー・ピストン・シール | 磨耗したリアブレーキディスク |
Braking Wave ディスク | 車両装着状態 | |
ブレーキパッドを交換する際には、ブレーキキャリパーから古いパッドを取り外し、古いブレーキパッドのライニングが磨り減った分だけせり出したピストンをブレーキキャリパーに押し戻す必要がある。そうしないと、ライニングに厚みのある新品のブレーキパッドがブレーキキャリパーに収まらない。低速系の二輪車講習会で酷使されるリアブレーキは、既に7〜8セットのブレーキパッド交換を行っているが、その交換ごとに、このピストンの押し戻しに力が要るようになってきていた。納車後数回目の交換までは、指でピストンを押せばスムーズにピストンがブレーキキャリパーに戻っていったが、走行2万キロを超えたあたりから、指に渾身の力を込めてもピストンがびくともしないことが増えてきた。そのような場合には、ブレーキキャリパーピストンツールを使ってピストンの固着を緩めるのだが、このツールを使うには、ブレーキキャリパーをマウントから外さなければならない場合がある。リアブレーキキャリパーをマウントから外すには、リアホイールを外す必要があるが、ブレーキパッドの交換毎にリアホイールを外すのは、いささか手間ではある。 ブレーキキャリパーピストンの固着の度合いは、徐々に進行してきているとは言うものの、ブレーキの効きそのものに問題があるようなことはなかった。ブレーキのタッチについても、ブレーキホースの取り回しを変更した2006年4月以降、特に大きな変化は感じていない。ただし、新車時と比べてホイールを手で回したときの抵抗がやや大きくなってきたようで、ピストンの固着が進んだことが、ブレーキの引きずりを助長しているのはほぼ間違いない。構造上、ディスクブレーキはブレーキをかけていないときには、ブレーキディスク側からの微小な入力でピストンが押し戻る方向にスムーズに動作しないと、ブレーキの引きずりを起こしてしまうからである。ピストンの固着は、ピストンに付着した汚れとブレーキキャリパー側ゴム製シールの劣化によって引き起こされる。ピストン周囲のグリス切れもその原因のひつとであろう。したがって、ピストンの固着を解消するには、それらの汚れを取り、シール類を新品に交換し、グリスアップを行う必要がある。 ブレーキの消耗部品はブレーキパッドだけではない。ブレーキパッドにはさまれるブレーキディスクも、ブレーキをかけるたびに磨耗していく。ブレーキディスクには使用限度となる厚みが指定されている。ブラックバードの前後ブレーキディスク(純正品)の新品時の厚みは5mmであり、それが4mmまで磨耗すると交換するよう指定されている。筆者はブレーキディスクの磨耗に今まであまり気を使ったことはなかったが、最近リアブレーキパッドライニングの厚みを点検をした際に、何気なくリアブレーキディスクの厚みも測ってみたところ、なんと約3.8mmしかなく、知らぬ間に磨耗が進んでいたことがわかった。二輪車講習会に参加するためか、走行距離にして僅か3万Km弱でリアブレーキディスクが磨耗限度に達してしまったのである。磨耗したブレーキディスクを仔細に観察してみると、ブレーキパッドライニングが触れないブレーキディスクの内周部と外周部は新品時の5mm厚のままであるので、ブレーキパッドライニング部分は、ブレーキディスクの磨耗した部分にはまり込むような形になっている。はまり込んだ分、ブレーキパッドのバックプレートは、ブレーキディスクの内周部および外周部に接近する。ブレーキディスクの磨耗が進むと、ライニングを使い切る前にバックプレートがブレーキディスクに接触してしまう。 上のような経緯で、先日の駆動系のリフレッシュに続き、ブレーキ系のリフレッシュを行うことにした。今回行った作業としては、3個のブレーキキャリパー(フロント×2、リア×1)のオーバーホール、およびリアブレーキディスクの交換である。ブレーキキャリパーのオーバーホール手順は、まずブレーキマスターシリンダーのブレーキフルードタンクのキャップを開け、ブレーキキャリパー側のブリーダーバルブからブレーキフルードをすべて吸い出す。次にバンジョーボルトを緩めてブレーキホースをブレーキキャリパーから外し、マウントからブレーキキャリパーを外す。ネジを緩めてブレーキキャリパーを分解し、エアーを利用してピストンを外す。この際もいくつかのピストンが固着しており、エアーを吹いてピストンを取り出す前に、プレーキキャリパーピストンツールでピストンの固着を緩めておく必要があった。外したピストンは塗装用のコンパウンドを使って汚れを落とし、洗浄後シリコングリスを塗布しておく。ピストンが錆びているとか、固着した汚れがコンパウンドでは取れないような場合は、サンドペーパーを使って取り去るとよい旨、複数のWebサイトに書いてある。しかしサービスマニュアルによると、ピストンの外径やブレーキキャリパーシリンダーの内径は1/100mm単位で管理されているので、それを考えると、錆びや汚れをサンドペーパーで落とすというのは、筆者には少々乱暴な作業に思える。今回すべてのピストンはコンパウンドで磨けばOKであった。 ブレーキキャリパー側は、灯油とブレーキクリーナーで洗浄後、ピストンが収まるシリンダー内のシール(奥:オイルシール、手前:ダストシール)を新品に交換する。シールを交換する際、古いシールが中々外れず苦労した。このための専用工具があるらしいのだが、筆者は持っておらず、代わりに精密ドライバーを使ってみたところ、シリンダー内面にキズをつけてしまったりした。色々と試したところ、裁縫用の太めの針を古いシールに突き刺して外すとうまくいった。シールは再利用しないので、これでよいと思う。外したシールを観察してみたところ、オイルシールについては、新品に比べて少しゴムが硬くなっているような気はしたが、形状も安定していて、目で見る限り劣化している様子はなかった。ダストシールは、シリンダーから外すと片側によじれるように変形してしまい、見るからに劣化しているようである。片側によじれるというのは、ブレーキパッド側からの熱の影響を受けていたことを示唆している。ゴムの質も新品に比べると弾力性が失われていた。 新しいシールを装着したシリンダーに薄くシリコングリスを塗り、既にグリスアップしておいたピストンをはめ込む。固着していたのがウソのようにスムーズにピストンがシリンダーに「吸い込まれて」いき、まさにオーバーホールをして良かったと思う瞬間であった。すべてのピストンをはめ込んだら、ブレーキキャリパーを組み立てる。スライドピン部分のゴムブーツを新品に交換してブレーキキャリパーをマウントに取り付け、新しいワッシャーを使用してブレーキホースを接続する。後はブレーキマスタシリンダーにブレーキフルードを入れ、エア抜きをして完了である。試乗してみたところ、ブレーキのタッチがわずかにソフトになっているように感じた。効きそのものに関しては、特に変わりはないように思える。ホイールを手で回したときの抵抗が小さくなり、ブレーキの引きずりが減ったようである。バイクを押して歩くような速度でフロントブレーキが鳴くことがあったが、それも解消された。 リアブレーキディスクの交換は、リアホイールを外して、ブレーキディスクを留めてあるネジを外し、新しいブレーキディスクに交換するだけである。今回新しいディスクを取り寄せる際に、ノマールでは面白くないと思い、Braking社製のWave形状ディスクにしてみた。ブレーキバッドも同時に新品(RKエキセル社製)に交換した。Wave形状ブレーキディスクの格好は大変よろしく、また効きも悪くなく、ジャダー等の不具合の兆候もなかった。だが一点気になったのは、ブレーキディスクの使用限度が4.5mmであったことである。譲って4.5mmは製品固有のSpecとしてそれで良いとしても、そのことが同社が提供する情報ソースに見当たらなかったことが少し残念である。筆者の使用状況を考えると、ノーマルの使用限度の半分で使えなくなることがあらかじめわかっていれば、このWave形状ディスクは選択の対象にはならなかったに違いない。 納車直後は、どうでも良いパーツをそれなりの理由をつけて社外品に交換する改造が多かったが、納車後7年目を迎え、最近は走りの質に直接影響する、地味なパーツのリフレッシュを行うことが多くなった。これは一台のバイクを長く楽しむ上での必要な変化であろう。これからもブラックバードを教材として、楽しみながら機械イジリの醍醐味を味わい続けたいと思う。年端の行った男の子には、1/1スケールのプラモデルが必要である。 |
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ドライブチェーン・パーツ | フロントホイールベアリング交換 | リアホイールベアリング交換 |
ドリブンフランジベアリング交換 | ハブダンパーとドリブンフランジ | チェーン・スプロケ・BT021 |
6月に3回目のユーザー車検を済ませた。総走行距離はこの6年間で約28,000kmと比較的短く、これまでに走行不能になるようなトラブルには遭遇したことはない。実は2006年の初めに一度、首都高速の上で立ち往生したことはあるのだが、この原因はセキュリティーシステム(スパイボール)のコネクターの接触不良だった。これは施工した自分のミスである。今年始めにエンジンからの異音でカムチェーンテンショナーを交換することになったが、これは走行不能になるようなトラブルではない。バッテリー無交換チャレンジは7年目に突入したが、週一回の補充電を始めてからは、エンジンの始動性には問題が出ていないし、バッテリーが原因で走行不能になったこともない。 これまでに交換した消耗部品としては、タイヤ4セット(ダンロップD205→ミシュランPilot Load→ブリジストンBT014→ブリジストンBT021)、フロントブレーキバッド4セット(リアはその約2倍)、イリジウムスパークプラグ3セット、エアフィルターエレメントは純正品を3セット使い、4セット目はK&N製のものに換えた。エンジンオイル交換は特にインターバルを定めていないが、交換後半年ぐらいでシフトフィーリングが悪化してくる頃に行っている。ブレーキ・クラッチフルードは、これまでに数回、汚れが顕著になったときに交換した。フロントフォークオイルの交換は2回行った。冷却水はこの6年間で1回交換したのみで、車検毎に補充するだけで済ませている。ドライブチェーンには気が付いたときに給油する程度である。さすがはホンダ製バイクといったところで、テキトウな素人メンテナンスでも文句ひとつ言わず快調に走ってくれる。 タイヤに関しては、ツーリングラジアル系を主にチョイスし、ハイグリップタイヤは一度も履いたことがないが、それでもビッグバイクで二輪車講習会に通うと、タイヤの消耗はそれなりに激しい。走行距離28,000kmで4セット目というのは、1回のタイヤ交換で40K程度の出費を考えると、講習会通いは立派な道楽である。タイヤの交換は自分で前後ホイールを外し、それをタイヤ屋に持ち込むことにしている。そうすれば、バイクを持ち込むより工賃が若干安いのだが、それよりも自分でホイールを外した際に、ハブダンパーやホイールベアリングのチェックを行ったり、普段手の入らないところを掃除したりすることの方が重要である。今年6月の車検前にも、そのようにしてタイヤを新しいものに交換したのだが、その際ホイールベアリング周り(ダストシール内側)のグリスがかなり汚れていることに気づいた。とりあえず車検はそのまま通したが、走行距離30,000kmも目前ということもあり、この際ホイールベアリングの打ち換えを含む駆動系のリフレッシュを行うことにした。 今回駆動系パーツとして用意したのは、前後ホイールベアリング(ダストシール類含む)、ハブダンパー(3セット目)、それにドライブチェーンである。ホイールベアリングは規格品だそうで、バイク用純正パーツでない汎用品をを調達すれば安く済むらしいのだが、その手配が面倒くさそうなので、ダストシール、ハブダンパーとともに純正パーツをパーツオンラインで調達した(約8K)。納車から6年間使い続けたドライブチェーンは伸びこそほとんど無いのだが、固着がかなり進んだようで、給油しても音が静かにならないので、同時に交換することにした。チェーンカットツールを持っていないこともあり、ドライブチェーンはRKエキセル製のものを、ノーマルリンク数の110でエンドレス加工したものを調達した(約17K)。エンドレス加工したチェーンを交換するにはスイングアームを外す必要があるが、その作業は経験済みでもあり、ついでにピボットベアリングのグリスアップを行えるので問題はない。 ホイールベアリングの交換は、ホイールを車体から外して2本の角材の上に置き、ダストシールをマイナスドライバーでこじって外した後、ベアリングリムーバー(ベアリングプーラー)でホイールに圧入してある古いベアリングを外す。片側のベアリングが外れたら、ディスタンスカラーを抜き、ホイールを裏返して反対側のベアリングを外す。新しいベアリングの圧入は、ベアリングが収まるホイール側ハブとベアリングアウターレースの外周をを脱脂した後、ハブにベアリングを置いてベアリングシールドライバとハンマーを使って叩いて圧入する。右側のベアリングが奥まで圧入できたらホイールを裏返し、ディスタンスカラーを入れてから、同様にして左側のベアリングを圧入する。このとき、ディスタンスカラーが両側のベアリングのインナーレースに触れるか触れない程度で圧入を止める必要がある。圧入しすぎるとインナーレースが内側からディスタンスカラーに押されてスムーズに回転しなくなるし、逆にディスタンスカラーとインナーレースが離れていると、ホイールを車体に取り付けられたとしても、ホイールアクスルボルトを締めたときに、インナーレースが外側のカラーで押されてスムーズに回転しなくなる。ちょうど良い加減で左側ベアリングの圧入を止め、左右のベアリングのインナーレースがスムーズに回転し、かつディスタンスカラーがぐらつかない状態にすることが重要である。 ハブダンパーは、リアホイールから(スプロケットが取り付けてある)ドリブンフランジを引き抜き、ホイール内部にセットされているそれを交換する。前回の交換から15,000km以上を経たハブダンパーはかなり痛んでおり、二つのダンパーをつなぐベルトも4個中3個が切れていた。ハブダンパーを新しいものに交換し、ドリブンフランジと接触する部分にシリコングリスを塗ってから、ホイールにドリブンフランジを取り付ける。ドリブンフランジに取り付いているドリブンスプロケットは、車検時にノーマル(44T)に戻していたものを45Tのものに取り換えた。ドライブスプロケットも車検時に16Tからノーマルの17Tに戻したが、それはそのまま使うことにした。この仕様の最終減速比は2.65(45T/17T)となり、ノーマルの最終減速比である2.59(44T/17T)と比べて2.27%のローギアード化となる。ちなみに車検前の仕様では、最終減速比は2.81(45T/16T)で、ノーマル比8.66%のローギアード化となり、スピードメーターにかなりの誤差が出ていた。 エンドレス加工されたドライブチェーンの交換は、まずスイングアームに連結されているリアショックのリンクプレートを外し、スイングアームピボットのボルト類を外して、スイングアームを車体から分離する。次にドライブスプロケットカバーを開けドライブスプロケットを外して、古いドライブチェーンをドライブスプロケットから外し新しいものに交換する。ドライブスプロケットとドライブスプロケットカバーを元に戻し、スイングアームのピボットベアリングとリンクプレートが付くピボットを清掃・グリスアップして、スイングアームを元どおり車体に取り付け、ドライブチェーンの交換は完了である。今回ドリブンスプロケットだけをノーマル+1Tにしたので、ノーマルリンク数(110L)のドライブチェーンでは長さが足りなくなる懸念があったが、それは杞憂に終わり、チェーンアジャスターの調整範囲に収まった。ひょっとすると、ホイールベースが短くなることで、運動性の向上が多少見込めるかも知れない。外した古いドライブチェーンは、車体につけていたときほど固着している感じはなく、音さえ我慢できればまだ10,000km程度は使えた可能性がある。 すべての部品の交換後、試乗してみたところ、まずアクセルの開け閉めに対するショックが大きく緩和されたことが体感できた。これは、チェーンとハブダンパーを換えたことによる効果であろう。ハーフスロットルから急にアクセルを閉じたときのショックが大きく緩和されたことが特に印象的で、いままではそのショックに無意識に身構えていたのだが、その必要がなくなり、走りのスムーズさや疲れ方が違ってくるように思う。ドライブチェーンが発する音もほとんどなくなってとても快適になった。今回はRKエキセルの誇る、WXリング採用シルバーメッキチェーンにしておいたので、この静かさが長く続くことを期待している。ホイールベアリング交換とスイングアームのグリスアップの効果は特に体感できるものではなかった。外したベアリングをチェックしてみても、インナーレースをまわしてゴリゴリという感触のあるベアリングはひとつもなく、今回特に急いでホイールベアリングを交換する必要はなかった気もするが、トラブルを未然に防ぐという意味ではこれでよかったのだと思う。 |
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リフターASSYおよびパーツ一式 | リフター位置(エンジン右側後方) | |
納車後約5年半を経て走行距離がやっと25,000kmに届こうかという最近、エンジンの回転数が3000rpmを上回ると、「ジャーッ」という音がエンジンから聞こえるようになってきた。3000rpm未満ではその音はしないが、それ以上ではヘルメットをかぶっていても、異音としか言いようのない品のない音がはっきりと聞こえてくるようになった。その異音がする回転域では、エンジンの振動が以前より若干大きくなったようにも感じられる。都内の一般道を走る分には3000rpmより上を使うことはあまりないのだが、高速道路では常用する回転数である。始動性やパワー感に変化はないのだが、音があまりにも下品でうるさい。 インターネットでこの現象について調査してみたところ、この異音はちょうどこれぐらいの走行距離のブラックバードによく見られる、このバイクの数少ない欠点のひとつであるらしいことがわかった。この異音の原因は、カムチェーンテンショナーのリフターと呼ばれる部品の劣化である。ブラックバードのエンジンはカムシャフトをチェーンで駆動しているが、そのチェーンはテンショナーにより適度に押えられピンと張られている。ところが、そのテンショナーを押すリフターがヘタると、チェーンを押える力も弱くなり、エンジンの回転数が高くなるとカムチェーンが踊って異音が出る。これを直すにはリフターを新しいものに交換するしかないが、しかしただ単にリフターを交換するだけで、この異音はウソのように治まってしまうという。リフターはエンジン外側にボルトで取り付けてあるだけなので、交換作業は比較的簡単である。そこで、リフター一式を○ップス世田谷店で取り寄せて交換してみることにした。 入手したのは、リフターASSYとガスケット、リフターの先端にフタをするためのボルトとワッシャー、それにリフターをエンジンに取り付るためのボルトとワッシャーである。価格は全部で4K弱であった(後で気付いたのだが、ボルトは古いものが再利用可能である。ワッシャーはシーリングのため不可)。ブラックバードのエンジンはサイドカムチェーン形式を採用しているので、エンジン右側後方にあるリフターには右側ロアカウルを外せばアクセスできる。リフターのしくみは単純で、リフター内部に仕込まれている棒がバネにより突き出して、エンジン内部の弓状のテンショナーを後ろから押すだけである。押されたのテンショナーはカムチェーンを押してその弛みを取る。リフターの交換は、古いリフターを外してから新しいリフターを取り付ければよい。新しいリフターにはテンショナーストッパーと呼ばれる金属片が取り付けてある。これを付けたままリフターをエンジンにボルトで留め、その後テンショナーストッパーを外せば、リフター内部の棒がバネにより突き出してテンショナーを押すことになる。古いリフターを外す際にガスケットがエンジン側に残ると、スクレイパー等でガスケットを剥がすのに時間がかかるが、今回はうまくリフター側に貼りついてきてくれたので、交換作業は15分ほどで終了した。 リフター交換後おそるおそるエンジンをかけてみたが、何の問題もなく始動した。試乗してみると、あれほどうるさかった3000rpm以上での異音は完全に消えた。さらに、極低回転域のピックアップがスムーズになると共に、エンジンブレーキ時に聞こえていた「バラバラ」という乱れた排気音もしなくなった。実は最近排気音がうるさくなってきたと感じていて、その原因はマフラー内部のグラスウールが痩せたせいだと思っていたのだが、リフターを交換したあとは何故かうるさく感じなくなった。これらのインプレッションから、リフター交換前はバルブタイミングが少しずれてもいたのではないかと思う。リフターを交換して結果的に大正解であったが、走行25,000km程度でこのような比較的重要な部品がヘタってしまうのはどうかと思った。部品代が比較的安いのは救いだが、DIYでリフターを交換できない人はバイク屋に頼むことになり、その場合には部品代に加えて作業工賃を支払わなければならない。 何はともあれ、異音も消えスムーズさを取り戻した我がブラックバードは、これからも通勤快速として大いに活躍してくれそうである。 |
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